第29回 世界最大級の天体観測望遠鏡とばね
みなさん、こんにちは。 暦の上では、もう秋です。 秋になると、夜空を見上げる機会が多くなるのは、私だけではないようです。 涼しくなるに従い、上空の空気が透き通り、夜空もクッキリ見えるようになります。 天体マニアにとっては、待ち焦がれた季節を迎えます。 人類は古代の頃から、夜空の月や星を見ながら、様々な思いを抱いてきました。 星と星とを線で結んで星座を考え、神々を配置し、信仰や文学の材料としてきました。 今では科学が進歩し、宇宙の遥かなたまで見ることができます。 天体観測用望遠鏡がどんどん進化したからですね。
このすばる望遠鏡が、2013年7月に、更に性能をアップしました。 望遠鏡の先端に装着されているカメラを交換したのです。 新しいカメラの視野角は、従来の7倍だそうです。 カメラの全長は3m。重さ3トン。8億7千万画素のデジタルカメラです。 ちなみに、それまでのカメラは8千万画素ですから、10倍の画素数です。 もっとすごいのは、このカメラの位置は、1~2マイクロメートルの精度で移動できるのです。 えっ!? 「マイクロメートルと言われても、ピンとこない?」 カメラだけに「ピンと」は重要ですね。 と、洒落ている場合じゃなくて。 1マイクロメートルは、1メートルの100万分の1です。 それでも、ピンとこない? え~とですね。 人間の髪の毛の直径が60~80マイクロメートルなんですね。 だから、髪の毛の60分の1~80分の1ぐらいですね。 ここで、「えぇ~、すごい!」と思いますよね(笑)。 そんな精度でカメラを動かせるなんて! で? それと、ばね、何か関係があるのか? ですよね? はい。あるんです。 実は、すばる望遠鏡の大きな鏡の姿勢を変化させるために、ばねが利用されているのです。 他の望遠鏡や、望遠鏡以外の装置で、何かを動かそうとした場合、通常は「アクチュエーター」という駆動装置を使うのですが、すばる望遠鏡のように微妙に物体(鏡)を移動させるためには、アクチュエーターではスピードや移動精度を満足させることができないんです。
天体に浮かんでいる星から地球へ届く光は、細かく揺れているんです。 その光の揺れに呼応するように鏡を動かさなければ、正確な映像を捉えることができなんいんです。
ところで、そんなにすごい「すばる望遠鏡」で何を観測しているか、興味がありますよね? はい。それは、「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」なんです。 またまた、難しい言葉が出てきましたね。 簡単に言うと、「暗黒物質」は全ての物をすり抜ける何か重いもの。 「暗黒エネルギー」は、宇宙を引き伸ばしているエネルギーです。 人類が知っている星や銀河などは「通常の物質」と呼ばれていますが、宇宙に存在する全ての中では、わずか5%以下でしかないんです。 残りの95%以上のものは目に見えず、正体不明な「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」なんですよ。 さぁ~、あなたも、今日から夜空を見上げ、この正体不明なものを探してみませんか? さて、今回はここまでです。 「第4回 宇宙のばね」にも、暗黒物質などについて語っていますので、そちらも是非ご覧ください。 それでは、みなさん、お元気で! ばねっこ(筆)