第13回 生活の中のばね
みなさん、こんにちは。 すっかり寒くなりましたね。 寒冷地域の皆さんは、早めに冬用タイヤを装着してくださいね。
さて、今回は、私たちの生活の中で利用されているばねについてお話をしましょう。 これがまた、非常に多いのです。むしろ、ばねが利用されていないモノを探す方がむずかしいかもしれません。
今では必需品になった携帯電話やパソコンは勿論のこと、ボールペン、ビジネス用かばん、傘など、本当にきりがありません。
パイオラックスが生産している生活用ばねとしては、例えば「混合水栓用ばね」や「ヘッドフォン用ばね」があります。
「混合水栓用ばね」には、ニッケルやチタンを利用した形状記憶合金が組み込まれています。 この「混合水栓」というのは、蛇口からお湯と水が混合されて出てくる仕組みになっています。 お湯と水が混合割合されて出てくるための通常の蛇口の他に、混合割合を調整するための赤↑と青↓が表示されているレバーが付いていますね。あ~、あれのことか~、とわかっていただけると思います。
この「混合水栓」の方式は、いくつかあるのですが、パイオラックスが生産しているような形状記憶合金が組み込まれているような場合には、とてもイイことがあります。 それは、急に熱いお湯が出てやけどをしたりすることがない、ということです。
これは、どういうことかと言いますと、他の機構の「混合水栓」の場合には、水とお湯の混合割合を、それぞれ(お湯と水)の通り道の太さを機械的に調整しているわけです(利用者がレバーをまわして)。 このような機構方式だと、湯沸かし器のパイロット(種火)がつきっぱなしなどの場合、最初に熱いお湯が出てくるわけですね。逆に寒い冬などには、なかなか温かいお湯が蛇口から出てこないのです(それぞれの水量は状況に応じて変化しないので)。
ところが、形状記憶合金が組み込まれている「混合水栓」の場合には、適度な温度を蛇口から出すために、蛇口まで送られてくる水やお湯の温度に反応して、形状記憶合金が変形するのです。この形状記憶合金の変形によって、それぞれ(お湯と水)の水量を調整してしまうのです。 すごいでしょう?
今度、デパートやホテルの「混合水栓」を見かけたら、ちょっと気にかけてみてくださいね。
「ヘッドフォン」にも形状記憶合金が使われている場合があります。 SONYのカセットテープ式ウォークマンがヒットしてからというもの、今日まで様々な機器にヘッドフォンを接続して利用していますよね。 そのヘッドフォンの中でも、左右のスピーカーをブリッジのようにつないで、耳にフィットさせるタイプのヘッドフォンにこの形状記憶合金の能力が発揮されています。
長期間にわたってヘッドフォンを利用していると、どうも耳とスピーカー部分のフィット感が甘くなったとか、かばんやハンドバックに入れているとブリッジの部分が変形してしまった、なんていう経験はありませんか? このような状態にならないように、形状記憶合金が利用されているのです。 いつ、どのような場合でも、常に一定の利用感を提供してくれます。
さて、今回はここまでです。 次回は、私たちの生活の中でも、特に医療の分野におけるばねについてお話します。
今年も、アっと言う間に1年が過ぎて行きそうです。 今年も1年間、「ばねの話と技術」をお読みいただき、心から感謝申し上げます。 来年も一層みな様に喜んでいただけるよう、内容を充実してまいります。 それでは、みなさん、良いお年を! (忘年会で飲み過ぎないでね)
ばねっこ(筆)